クリスタリアス3
「ドットも早く財布をお返ししろ。ギガンティアの近衛隊を相手に、ただでは済まぬぞ。」
いつの間にか、人垣は自然に三人の周りから消えうせ、いつものように人々が行きかっていた。トッドと呼ばれた子供は、「リアスがいたんだったら仕方がね~や」と、渋々女性に言われるままにアレックスに財布を返し、あっという間に人ごみの中に消えていった。
「済まぬ。アレの親は目が不自由でな。ああやって妹たちを養っているのだ。許してやってくれ。」
見た目は20歳くらいのパキパキとした印象を受ける女性は、アレックスにそう話しかけてきた。アレックスも、トッドなる少年の根性のいいところが気に入ったのだろう。
「今度はチャンとお金が渡せるように、俺の従者にでもなってもらうさ。」
と、ニヤニヤとつぶやいた。
「寛大、痛み入る。しかし、無用心に歩かれる貴殿もいけないのでは?気をつけられよ。それでなくともその金髪は目立つからな。私はリアス。」
リアスはクスリっと笑った。アレックスの故郷、ギガンティアは、ロサ・ムンディ大陸の中では珍しい金髪・青瞳の民であり、ここまで見事な金髪は王侯貴族だという事の証拠でもある。神都セレスティアでも、かなり目立つのは確かである。
「俺はアレックス。まあ、先祖から代々受け継がれた髪だから仕方ないがね。」
苦々しく青年貴族は笑って見せた。
リアスとアレックスは神殿前の人ごみから抜け出し、一本横にそれた道へと入った。既に日は傾き、そろそろ空が茜色に染まり始めている。アレックスはどこか宿がないかと、リアスに聞いた。
「この先にいい宿がある。トッドの件もあるから、亭主にいい酒でも出してもらうように言っておこう。」
リアスは「山猫亭」という宿屋を紹介すると、約束どおり、太った亭主が満面の笑みで迎えてくれた。亭主に馬を預け終わると、アレックスはリアスに礼を述べた。
「取り合えず、今日はコレで休むとするよ。宿まで紹介してくれて感謝する。俺は明日は神殿に行くつもりだ」
「ああ、それならセレスティアル神殿は私が案内しよう」
「おや、それはありがたい。ではまた明日。」
アレックスはクリスと分かれると、一階の食堂で食事と酒を所望した。亭主はセレスティアル特産の果実種と、肉料理を振舞った。その料理の美味いこと・・・。アレックスは上機嫌で平らげると、ほろ酔いで二階に借りた部屋へと上がっていった。
「こんなに美味い料理は久しぶりだ。神殿もなんとか入れそうだ。まあ、なんとかなるさ・・・」
剣を腰からはずすと、アレックスは急に眠気に襲われてきた。アレックスはその眠気に抗う事無く深い眠りに落ちていった。


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